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実質的な差別は、雇用均等法10年の今も再生産されている。 現行の能力主義管理に性差別の実質的な克服の役割を期待するのは、特別の体力や知力に恵まれた女性でなければまず幻想に終わるだろう。
他方、工場労働、事務の「一般職」、販売などに就く女性労働者の多数は、もっと現実的である。 この人びとにも能力主義管理は、「女性の感性や特性を活かす仕事」で、またはどの会社にも不可欠の「補助的な業務」でもっとがんばれとよびかけている。

OLの仕事ももう気楽ではないのだ。 このよびかけを彼女らがきっぱりと拒むきざしは今のところない。
けれども、彼女らの圧倒的多数が、管理職やそれにいたる総合職の男性に求められるハードルの高い日本的能力の獲得をチャレンジの対象とする気持ちになれないことはたしかなように思われる。 彼女らは仕事以外の生活領域を大切にして、会社で差別されているかわりに会社の仕事に全身をのめりこませなくてもよいという、〈被差別者の自由〉に生きるのである。
このように能力主義を内面化することなくやりすごす生きざまは、思えば欧米のブルーカラーの間に広くみられるノシエリート主義にどこか似ている。 だが、日本の女性たちのノンエリート主義は、みずからをその圧力から遠ざけはしても、能力主義管理そのものを批判する位相にはない。
そればかりか「どんな時代になってもやっぱり男は男、女は女じゃない」と考えがちなこの女性たちは、みずからの職業生活の充実はあきらめ、そのかわりパートタイマーまたは専業主婦として、能力主義的競争に身を投ずる男たちの「銃後の守り」につきもするわけである。 若者たちは?では、青年労働者についてはどうか。
さきにあげた総理府調査では、能力主義的な賃金への移行を好ましくみる人は20代と30代では70%以上で、年齢平均を超えている。 対比概念としての「年功序列」には「個人の能力や業績」の要素がまったくないという認識に誘われるような設問になっている点が問題であるが、若者たちの多くは、まずは能力主義の考え方を受け入れているといってよい。
それはなぜかをさぐってみよう。 まず若者たちは、70年代以降にいっそう明瞭化した「大衆教育社会」の強いる激しい受験競争を体験している。
競争の成否をきめるものは、出身階級の影響を受けやすい人文的教養の修得というよりはすぐれて、がんばれる能力のたまものである暗記を含む学力であった(竹内1995)。

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